創作家のつぼみ
漫画家を目指すある女のブログ。 最近はもっぱら漫画制作日記と萌えの掃き溜め。好きなことを好きなように語っています。
消えた思い出~能力(ちから)~
“生を共有する者”――――・・・いわゆる“共有者”と呼ばれる者は、特定の吸血鬼と魂を共有し、そして血を与える者のことを指す。
彼等は薬の投与によって吸血鬼の毒への抗体が出来ているため、牙を立てられても平気でいられるのだ。更に相手の吸血鬼の『情報』を自身の体に植えつける事により、その吸血鬼と“生命を共有”しているのである。
これは成長の速度が相手の吸血鬼と同じになり、そして死期すらも同時にやってくることを意味する。
つまり、吸血鬼が死亡したその瞬間、共有者の命も尽きてしまうのだ。
ただしこれは一方的なものであって、共有者が亡くなったとしても、吸血鬼が死ぬことは無い。
又、吸血鬼とその共有者は魔界でしか暮らせない。人間と成長する速度が極端に異なるためだ。
魔界には、人間では到底敵わない、血に飢えた魔物がごまんと生息している。
人間へのデメリットが大き過ぎるため、近年共有者の数は減少の一途を辿っているのだ。
それも、仕方がないと言えるかもしれない。
そんな危険な思いをして、吸血鬼と共に生きようという人間が、どれだけ存在するだろう。
そもそも、今の時代に吸血鬼の存在自体、認める者がいるのかどうか。
それでも成仁は、墨谷についてきた。
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ガーゼで傷口を覆い、テープで固定する。
シャツのボタンをすると、成仁は何事も無かったかのように食事を再開した。
墨谷はその向かいの席に腰掛け、ただ、その様子を眺めながら、およそ六、七十年前のことを思い出していた。
『じゃぁっ・・・・・・ボクにしてよ!』
あの時、何も恐れずためらわず、自分を連れて行ってくれと言った少年。
成仁は出会ったばかりの、まして人間ですらない墨谷を、直ぐに受け入れてくれた。
しかし成仁は、その時のことを覚えてはいない。
人間だった時の記憶を最低限まで抹消するのも、共有者の条件であるからだ――――――・・・。
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絵で食べていくことを夢見ている山羊座O型。
好きなものは漫画と猫と堂本光一。
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