創作家のつぼみ
漫画家を目指すある女のブログ。 最近はもっぱら漫画制作日記と萌えの掃き溜め。好きなことを好きなように語っています。
消えた思い出~始まり~
寺。
「和尚様ただいまーっ!」
そう成仁が駆け出した先には、成る程住職らしき坊主が立っていた。
彼は成仁の声に笑顔で振り向き、
「成!どこに行っていたんだ」
と尋ねた。
しかし成仁はその問いには答えず、勢い良く和尚の体に抱きついた。丁度お腹の辺りに少年の顔がうずまる。和尚の顔には深い皺が刻まれており、彼が決して若くないということを示していた。
見た限りでは60代半ばくらいだろうか。皺だらけの顔の中で、黒い瞳が穏やかな光を放っている。
「あのね和尚様、しばらくあの人をお寺に泊めてほしいんだ。いいでしょ?」
そう言う成仁からは、先刻の妙な雰囲気は感じられなくなっていた。
和尚は、彼等より少し離れた所に佇む墨谷を見つけ、優しく笑いかけた。つられて墨谷も笑顔を返す。
「彼は?」
「墨谷悟くん!ボクの従兄なんだ!」
その従兄は、思わず出かかった声を何とか抑えていた。笑顔でサラッとそんな嘘を吐くとは、なんという子どもだろう。成仁は更に細かい嘘を並べ、墨谷を従兄へと仕立て上げていく。
話を聞き終えると、和尚はゆっくりと墨谷の方へ近付いてきた。
「墨谷悟くん」
しっかりとした声で答えた。
「はい」
和尚は優しくにっこりと笑い、
「行き先が決まるまで、私たちの寺にいるといい。ただにぎやかな子達が多いのだが、平気かね?」
墨谷は成仁がこの人に何を言ったのかが気になったが、何はともあれ宿がもらえるのだ。文句は言うまいと、「大丈夫です」そう返事をした。
実を言うと彼は苦手でこそないが、子どもはあまり好きではなかった。どちらかといえば一人でいるのを好む性格で、共有者捜しにも乗り気ではないのだ。しかし、掟には従わなければならない。なにより、共有者を見つけなければ人間を狩りに、毎年下界へ降りてこなければならないのだ。
「墨谷」
成仁に名前を呼ばれて辺りの景色を見てみると、5歳から10歳くらいの子どもが6人・・・10人・・・12人もいた。竹馬が倒れている所を見ると、遊んでいたのだろうが、今は見慣れない侵入者に目を丸くしている。
成仁が笑顔で話し始めた。
「あのねみんな、この人はボクの従兄で墨谷悟くんっていうの。お父さんが外国の人だから目がちょっと青いけど、全然怖くないよ。優しいからダイジョウブ!今は両親が亡くなって、一人で色んな所を旅して社会勉強してるんだって。ここに居る間はお寺に泊まってもらうから、みんなヨロシクね!」
そういう設定になっているのか。無難と言うかありがちと言うか・・・・・・まぁそういうことならなら細かいことを訊かれる事もないだろう。
「よろしくお願いします」
そう言って軽く笑うと、子ども達はこちらへの警戒心を解いたようだ。
「成のお友達なの?」
「イトコってなぁに?」
「目が青いの?見せて見せて!」
「どこから来たの?」
「何歳ですか?」
「背高いねー」
好奇心が旺盛なこの年代は、疑問や質問が絶え間なく出てくる。どうしたものかと墨谷が考えていると、成仁が助け舟を出してくれた。
「墨谷!部屋に案内するからついて来て!」
「あ、はい」
すると、12人の子のうち一人が「どこに行くの?」と訊いた。
「蔵書室。ついて来ちゃダメだよ!」
数人の子ども達が不満そうに「えーっ」と言った。
墨谷は考えた。そして、今しがた成仁が言った言葉を頭の中で反復した。
『蔵書室』
ここで生活しているのなら、書斎くらいあってもおかしくないだろう。現にこの寺はかなりの大きさだ。しかし、成仁はこうも言った。
『部屋に案内するから・・・・・・』
「・・・・・・」
さて、どこで夜を明かすことになるやら。
「和尚様ただいまーっ!」
そう成仁が駆け出した先には、成る程住職らしき坊主が立っていた。
彼は成仁の声に笑顔で振り向き、
「成!どこに行っていたんだ」
と尋ねた。
しかし成仁はその問いには答えず、勢い良く和尚の体に抱きついた。丁度お腹の辺りに少年の顔がうずまる。和尚の顔には深い皺が刻まれており、彼が決して若くないということを示していた。
見た限りでは60代半ばくらいだろうか。皺だらけの顔の中で、黒い瞳が穏やかな光を放っている。
「あのね和尚様、しばらくあの人をお寺に泊めてほしいんだ。いいでしょ?」
そう言う成仁からは、先刻の妙な雰囲気は感じられなくなっていた。
和尚は、彼等より少し離れた所に佇む墨谷を見つけ、優しく笑いかけた。つられて墨谷も笑顔を返す。
「彼は?」
「墨谷悟くん!ボクの従兄なんだ!」
その従兄は、思わず出かかった声を何とか抑えていた。笑顔でサラッとそんな嘘を吐くとは、なんという子どもだろう。成仁は更に細かい嘘を並べ、墨谷を従兄へと仕立て上げていく。
話を聞き終えると、和尚はゆっくりと墨谷の方へ近付いてきた。
「墨谷悟くん」
しっかりとした声で答えた。
「はい」
和尚は優しくにっこりと笑い、
「行き先が決まるまで、私たちの寺にいるといい。ただにぎやかな子達が多いのだが、平気かね?」
墨谷は成仁がこの人に何を言ったのかが気になったが、何はともあれ宿がもらえるのだ。文句は言うまいと、「大丈夫です」そう返事をした。
実を言うと彼は苦手でこそないが、子どもはあまり好きではなかった。どちらかといえば一人でいるのを好む性格で、共有者捜しにも乗り気ではないのだ。しかし、掟には従わなければならない。なにより、共有者を見つけなければ人間を狩りに、毎年下界へ降りてこなければならないのだ。
「墨谷」
成仁に名前を呼ばれて辺りの景色を見てみると、5歳から10歳くらいの子どもが6人・・・10人・・・12人もいた。竹馬が倒れている所を見ると、遊んでいたのだろうが、今は見慣れない侵入者に目を丸くしている。
成仁が笑顔で話し始めた。
「あのねみんな、この人はボクの従兄で墨谷悟くんっていうの。お父さんが外国の人だから目がちょっと青いけど、全然怖くないよ。優しいからダイジョウブ!今は両親が亡くなって、一人で色んな所を旅して社会勉強してるんだって。ここに居る間はお寺に泊まってもらうから、みんなヨロシクね!」
そういう設定になっているのか。無難と言うかありがちと言うか・・・・・・まぁそういうことならなら細かいことを訊かれる事もないだろう。
「よろしくお願いします」
そう言って軽く笑うと、子ども達はこちらへの警戒心を解いたようだ。
「成のお友達なの?」
「イトコってなぁに?」
「目が青いの?見せて見せて!」
「どこから来たの?」
「何歳ですか?」
「背高いねー」
好奇心が旺盛なこの年代は、疑問や質問が絶え間なく出てくる。どうしたものかと墨谷が考えていると、成仁が助け舟を出してくれた。
「墨谷!部屋に案内するからついて来て!」
「あ、はい」
すると、12人の子のうち一人が「どこに行くの?」と訊いた。
「蔵書室。ついて来ちゃダメだよ!」
数人の子ども達が不満そうに「えーっ」と言った。
墨谷は考えた。そして、今しがた成仁が言った言葉を頭の中で反復した。
『蔵書室』
ここで生活しているのなら、書斎くらいあってもおかしくないだろう。現にこの寺はかなりの大きさだ。しかし、成仁はこうも言った。
『部屋に案内するから・・・・・・』
「・・・・・・」
さて、どこで夜を明かすことになるやら。
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龍海(Ryukai)
性別:
女性
趣味:
絵、イラストを描くこと
自己紹介:
成人済みの絵描き、漫画描き(趣味)。
絵で食べていくことを夢見ている山羊座O型。
好きなものは漫画と猫と堂本光一。
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